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心のクッション

私は介護老人施設で働いています。ほとんどが長期入所の方ですが、ショートステイと言って短期間だけ入所される方もいます。現在も数名の方がショートステイを利用していて、どの方も期間は毎月3日ほどです。その内の一人に90代前半の女性がいます。耳は遠いですが、頭も足腰もしっかりしていて、基本的に自分のことは自分で出来るかたです。実の娘さんご家族と同居しているのですが、この方の日程が度々、ご家族の都合により変更になることがあります。3日のはずが1週間、2週間に伸びたりするのです。今回も突然、1週間ほど延長になり、今日やっと帰る日になりました。

この方が私に言いました。「ウチに〇〇ちゃんっていう猫がいんの。帰ったらその猫に、ただいまー〇〇ちゃん、久しぶりだね―、って話しかけるの、いつも。それでおしまい。後は余分なことは言わないの。実の娘にだって気は使わないと。お嫁さんだったらもっとだよ」

家に帰れると思ったら理由も分からず、突然の日程変更。そのことについて何も言われませんが、心の中では、がっかりしたり、やるせない気持ちになることもあるのだと思います。おそらく娘さんが算段して色々決めているのでしょうが、それに逆らったりはしないのですね。波風は立てず、まーるく、おさまるように努めているのですね・・。まあ、老いては子に従え、といいますしね。

ひるがえって、私は自分の母親のことを考えてみました。この方とは、まったくの正反対ですね・・。気性が荒く腹が立ったら黙ってなんかいられず、ヒステリックにまくしたてる・・。波風、立てまくり・・。感情のおもむくまま・・。
昔から周囲からは怖い人と思われていましたね・・。もし母親が施設に入所したら・・すごく嫌われると思います・・。っというか追い出されるかも・・。

ふと、思ったのですが、この90代の方が家に帰ると話しかける猫のこと。猫が人の気持ちを理解できるわけではないのですが、動物の存在って心を慰めてくれるというか・・。猫に話しかけることで気持ちに折り合いをつけているのかな、という気がしました。

ウチにも猫が2匹います。私も猫たちによく話しかけます。「ただいまー寒いね」「いい子にしてた?」「ごはん、美味しい?」等々。時々、愚痴も聞いてもらいます。「ニャーニャー聞いてよ・・ムカつくんだよ!むにゃむにゃむにゃむにゃ・・・」
最後まで聞いてくれず、飽きてどこかに行ってしまいますが(笑)

母親は猫のことを「いるだけで本当になんの役にも立たない」と言います。確かに、その通りかもしれません。しかし私にとって・・もしかしたら90代の方にとっても、猫が心のクッションになってくれているように思います。やるせない気持ちになった時、心を和らげてくれるというか・・。

そういえばウチの猫たちは、私と夫の側にはよく来ます。膝に乗ったりもします。でも母親のところには、まったく寄り付きませんね。猫たちも母親が怖いことをちゃんと分かってるんだと思います。

読んで下さりありがとうございます。