カテゴリー

「わたしは灰猫」久しぶりに読んだ長編小説

いつからか長編小説を読まなくなりました。・・といか読めなくなりました。数ページ読むと、眠くて眠くて仕方なくなるのです。新刊が発売されれば必ず読んでいた好きな作家の本もダメになりました。これは小説のせいではなく、私のせい。長編小説を読む体力がなくなってしまった感じです。

そんな私ですが久しぶりに長編小説を読みました。青山繁晴著「わたしは灰猫」です。評判もよかったですし、タイトルにも惹かれ楽天で購入しました。一気に読んだのではなく、数日かけて合間合間で読んだのですが、不思議と眠くなりませんでした。

物語はいたってシンプル。若い女性と謎の老婆との出会い、交流、そして別れ。劇的な出来事があるわけではないけれど、不思議な味わいがありました。幾つもの死が絡んでいますが暗くはなく、物語の至る所に水の気配があり、それが優しさと明るさを醸しているように思えました。

主人公の女性は20代半ば。日本で生まれ、アラスカで育ち、ニューヨークに移り住み、その後デンマークで政府系の研究機関で働いているという凄い経歴です。正直、最初この女性と日本の奥深い山に住む謎の老婆”灰猫”との対比がしっくりきませんでした。しかし、キャラクターたちの人柄により、自然と馴染んでいきました。

何年かに一度、出現する森の中の湖は物語のキーワードです。この湖の神秘性が生と死の象徴・・と言ってしまえば陳腐かもしれません。でも、その美しい湖に浸り、たゆたい命の洗濯をすることを夢想しました・・。

私はこの物語の世界は好きだな、と思いました。読後は涼やかな気持ちになりました。

最初、表紙の写真を見た時、なんだろう?これ・・と不思議だったのですが、読み終えて納得しました。独特の文体だな、と思いましたが読みづらくはなかったです。

読んで下さりありがとうございます。