長いこと軒下に万病に効くサウナというものが置いてありました。大きな洋服ダンスくらいの大きさで主に木で作られています。
30年近く前、末期癌だった父親が購入しました。癌が分かった時、すでに余命3カ月から半年。
医師は父親に癌であることは告げましたが余命に関しては告げず、父親は余命がそんなに短いとは思っていないようでした。いえ、薄々分かっていたけれど思いたくなっかったのかもしれません。
父親は病院ではなく、家で過ごすことを選択しました。そして何とか癌を治すことに望みをかけ、癌治療についての本を読んで知った東京の病院に行ったり、高額な健康食品を購入したり様々なことをしました。万病に効くサウナもその内の1つ。
当たり前ですが、そんなもので癌が治るわけはなく、お金をどぶに捨てるようなものと思いましたが、本人の好きなようにさせました。
ちなみにサウナを購入して、すぐに立ち上がることが困難になりサウナを使ったのは1回だけ・・。
ほとんどベッドで過ごしていましたが、頭はしっかりしているし手も使えるので枕元に電話を置き、癌に良いのではと思うものがあると注文したりしていました。
そして、その内、なぜか新たな健康食品などの会社から電話がかかってくるようになりました。枕元に電話があるので、かかってくると父親が出てしまい本人は藁にも縋る思いなので冷静な判断が出来ず、言われるがまま買ってしまう・・。
はっきりいって怪しさしかなかったです。良い顧客(カモ)として父親の情報が出回っているのでは・・と思いました。
本人の好きなように、とは思っていたけれど、さすがに電話を何とかした方がいいのでは・・と考えました。しかし父親から電話を取り上げることもできす、そのまま・・。
結局、父親は半年を超えて少しして逝きました。残されたのは、よく分からない健康食品の残りと万病に効くサウナ。
健康食品など小さいものはいいけれど、大きくて重い万能サウナは処分が面倒で結局、軒下に置きっぱなしに。
そして、ずーと気になりつつ軒下に置かれているのが当たり前のようになっていました。
しかし、このゴールデンウイークに突如、思い立った夫がサウナを解体して軒下から外に出したのでした。
万病に効くサウナ・・もしかしたら父親にまつわる唯一のものだったかも。もちろん惜しくはなく解体されて軒下も心もスッキリ。
とりあえず解体したサウナは外の目につかないところに野ざらしで置いてあります。もっと細かくして、その内、ゴミに出そうと思います。いや、その前に朽ち果ててしまうかもしれません。
残り少ない人生、もっと有意義なことにお金を使えばよかったのに・・と父親に対して思ったりします。本人がそれでよければいいけれど。私にとっては反面教師になってくれたかな・・。
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