昨日、職場(デイサービス)で利用者の90代の女性といろいろ話をしていました。その中で女性は「私は運がよかった」と言いました。
女性は結婚前に手相を見てもらったら、「あんたは運がいいよ。お金には困らない。必要な時には入ってくるから」と言われ本当にその通りだったそうです。
そして今は亡き旦那さんもいい人で口喧嘩もしたことがなく、現在は息子さん夫婦と同居していますが関係も良好なようです。
女性は腰が大きく曲がり体力の衰えはありますが、認知症もなく年齢を考えればしっかりしています。
「私は運がよかった」とは「幸せな人生だった」という意味でもありますね。女性は心の底から素直にそう思っているのが伝わってきて和やかな気持ちになりました。
さて、翻って私が人生の終盤になった時、自分の人生を振り返り「幸せな人生だった」なんて言えるかな・・と考えてみました。ちょっと自信がありません。おそらく、いろいろな後悔が押し寄せてきそうな気がします。
そんなことを考えていたら一人の女性作家が頭に浮かびました。尾崎翠です。私が尾崎翠を知ったのは30歳前後の頃だったでしょうか。
文庫本を1冊持っていました。今ではどこかにいってしまいましたが「第七感界彷徨」とか「アップルパイの午後」とか印象に残っています。
活動したのは大正時代から昭和初期の短い期間で、東京から故郷の鳥取に帰郷してからはひっそりと暮らしていたそうです。
そして70代半ば、病に倒れ死が迫った翠は「このまま死ぬのならむごいものだねえ」と大粒の涙を流したという・・。
文庫本の解説に記されていた、このエピソードが心に深く残りました・・。作家を断念したことへの後悔があったのかもしれません。
なるべく後悔のない人生を送りたいと思いつつ、私には尾崎翠の言葉が近しく、しっくりとした感じがするのでした。
読んで下さりありがとうございます。